2017.07.16

上映会が終わってからすぐ、なんとなしに台湾に来た。気付いたら4,5日が過ぎている。

様々な感想がLINEやらメールやらで届く。アンケート用紙を眺めながら、表情を想像する。有難う。飛行機で3時間半。手紙だと1週間と数日。そのくらいの距離の処に来ている。

朝は9時〜10時の間に起きる。起きてから、服を着る。寒過ぎる冷房の温度を下げる。オレンジジュースを飲んでからシャワーを浴びる。歯磨きをする。外に出てタバコを吸う。あまり美味しくはない、且つ少し高めの小吃を食べる。気付けば汗だくになって、時計は12時を過ぎている。

何処かで昼寝をする。コンクリートに寝そべる。草の上で。或いは日の照る屋上で。空を見上げる。眺める。雲は動いている。青い空が、雲を隠している。雲が青い空を隠している。

同じ空なのに、何処かで見たような景色とは程遠い何かが、鼻をツンと突いてくる。蚊が僕の血を吸う。もう一匹。あと、もう一匹。

路上に捨てられたゴミにハエが群がる。夕方の5時半になると懐かしいメロディを鳴らしながらゴミ収集車がやってくる。人々は夕日に照らされながら、その車を追いかけて行く。車が止まる。停車する。人々はゴミを捨てると、そのまま”ゴミ友”と大声で会話をしている。彼ら彼女らが何を言っているのかは、僕は分からない。時と共に影は伸ばされていく。伸ばされなかった影が、僕の足元に転がっている。

ボロボロの自転車に乗って、向こう側の岸につながる橋を渡る。空は違う色を映し出している。並んだ果物は、誰かを待っている。夜まで。次の朝まで。次の次の昼になるかもしれない。

“真っ暗な穴と穴で繋がっている人に、”

誰も分からないけど、誰かに分かるような日常や表情が、ゴミに捨てられなかったShitの中に詰まっているのかと思うと、トイレ掃除をしてペーパーの詰まった桶を眺めている自分がバカらしくなってくる。そんなメタファーは何処にも回収されず、転がったままで、見えない何かが吸い取っていく。拭き取っていく。風と同じように。そんな煙に巻かれて、僕は誰かとまた顔を合わせる。目を合わせて、ジーッと、陽が落ちるのを待っている。

中正橋の上で、誰かから電話が掛かってくる。誰なのかは、分からない。けれども、またボタンを押して携帯を耳に当てる。風が強過ぎて、何も聞こえない。それでも僕は聞こえない何かのために首を縦に振り、相槌を打つ。涙すら出ないような、変わらない景色として、新たな1ページを描き始めている。

河川敷に座って、波の音を聴く。橋の灯りが川面をオレンジ色に染めていく。魚が息苦しそうに、そのオレンジ色の川面からジャンプしている。飛び出している。一匹。もう一匹。それどころではない大量の息苦しさが、息苦しさに向かってジャンプしている。

僕は、そんなに息苦しくない。知らない土地を、知ったかぶりで全て僕のものにしてしまう。ジャンプしても下に落ちることはない。

そんなことを考えながら、空を見上げる。新たな1ページを。後ろから書き始めてしまいたい。そもそも、それを描ける筆を持っていないことに気が付いた。空は既に黒い。「最高密度の青色」にはならない。アホなのか。

「你愛我嗎」

家に帰ると、まず纏め買いしたビールの缶を開ける。一昨日買ったブドウを千切ってから洗って食べる。ソファーに座って無機質な壁を眺める。眠くなる。電気を消す。

「沒有」

シャワーはまた明日浴びよう。朝起きたら、オレンジジュースを飲もう。

そんな世界が、頭上を通過していった。

728

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です